事例紹介

土地、駐車場、倉庫、アパート等を相続されたオーナー一家の事例

収益の上がらない資産を投下できる資本に変える

先代から引き継いだ10箇所約3,000㎡の土地、10億円を超える不動産。そんな大地主のオーナー一家に“相続”という転機が訪れたのは5年前のことでした。不動産は土地、駐車場、アパート、倉庫などですが、そのほとんどが郊外で、昔からの契約を継続してきたために賃料も安く、固定資産税を差し引くと利回りは1%、手残りは年1,000万円という、宝の持ち腐れ状態でした。
まず、相続対策として着手したのが「法人成り」でした。「法人を設立して法人から給与を得る」ようにすれば、給与に対する所得税課税で「給与所得控除」の適用がなされることで法人・個人合わせた課対象が小さくなります。
そこで、法人をつくり、その法人に所有していた倉庫の上物だけを1,500万円で売却。法人は購入に際し融資もつけました。その対策により倉庫の賃料月40~50万円から地代5万円を差し引いた額が毎月の給与となります。また、個人が土地を所有しているため、借地権の認定課税を回避するために「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出しました。このようなパターンによく対処する常套手段です。
並行して収益が上がっていない土地と駐車場を売却していきました。100~400㎡の土地が6筆、400㎡を超える駐車場が2区画。土地はそれぞれ1,200万~5,600万円、駐車場は7,000万~8,000万円で売却することができ、2~3億円の資本をつくることができました。それを頭金とし、銀行の融資を得ながら、新たに収益性の高い3つの物件を購入したのです。購入価格は総計8億円。借入価格は7億円。当然負債が残ります。
売却した4件の貸付用土地は同年に賃貸マンションを購入したため「事業用資産の買い換え特例」が適用されました。この特例は平成29年3月31日までの時限立法になっていますが、事業用に供している特定の資産を譲渡し、所定の期間内に特定の資産を取得して、その取得の日から1年以内に当該取得資産を事業の用に供する場合に適用されます。適用されると、いま払うベき譲渡所得税を節税することが可能となるのです(※1)。これによって圧縮損1億2,900万円を計上。結果、2億円もの相続税を回収することができました。

※1)譲渡所得の80%が一部地域を除いて繰り延べされるため、残る20の譲渡所得に対して20%課税されるので、実質的な税率は4・0%になるのです。手元に残る現金で考えれば、特例が適用されなければ80ですが、特例によって96近くが残ります。この差によって、新しく購入できる物件の条件が大きく違ってきます。

 

売れる物しか買わない、という見極める力を

長年、一族に引き継がれてきた土地は、オーナーがその価値を正しく認識できていないケースが多く見受けられます。相続対策となれば、なおさら所有している土地条件・価値を把握しておかないと大きな損失となります。たとえば、道路に接していない土地や借地権が発生している貸地は時価より相続税評価額が2倍ほどにもなり不利。土地の価格についても、地域差がかなりあり、総じて地価の高い都市部の土地の方が、地価の低い地方の土地より有利なのです。同じ不動産であったとしても、条件の悪い不利な土地は早めに処分して、それを資本に都市部の収益性の高い不動産に変換しておくことが成功への鍵となります。
さらに、土地ばかりを扱っていても収益性はアップしていきません。不動産の質を上げるためにアパートや商業施設など他の方法を検討することが必要です。収益性を上げる不動産とはどんなものなのか。将来の社会、人の動きを見極める力量が問われます。今後の人口問題はどうなっていくのか。人が住みたいと思うエリアはどこなのか。これから買う物件は2020年以降、不動産バブルがはじけたとしても、収益を獲得できるものでなくてはなりません。

 

次の有益物件を待ちながら、攻めの運用を

今回の事例のオーナーが所有不動産の売却で得た資本によって新たに購入した3物件。そのうちのひとつは前出した「事業用資産の買換え特例」の適用となった南浦和駅徒歩10分の中古賃貸マンション1棟で、現在売却を進めています。
2件目は都内有数の商店街。400もの店が並び、昔から根強い人気を誇るエリアです。商店街まで徒歩5分、駅までは徒歩6分という好条件中古の賃貸マンション。購入価格は2億8,000万円。2億4,000万円の借入でした。部屋はほぼ満室状態で収益率は5%という好物件です。こちらは3年所有して年1,700万円の家賃収入。売却時にほぼ購入時と同じ価格で売ることができたため、3年間の家賃収入分の収益に加え、1億円の相続圧縮のメリットがありました。この物件は5年未満の所有でしたので短期譲渡所得の税率が高く、1,250万円の赤字となりましたが、同年に所有期間5年超の駐車場を売却し、長期譲渡所得との損益通算により相殺することができました(※2)。
3件目は都心近郊の主要都市を結ぶ武蔵野線西浦和駅から1分未満。駅前の通り沿いの角地。レンガ造りの外観がスタイリッシュな印象のマンションです。富裕層に向けて高級分譲にしてもよし、店舗や貸事務所としても需要があるでしょう。将来建物が老朽化したとしても立地がいいので手放さず、所有し続ける選択肢もあるでしょう。一方、西浦和駅が今後どのような開発がなされるか分かりません。もし、3年所有して売却したとしても、固定資産税を差し引いて年に1,300万円の家賃収入があるので、購入価格の2億5,000万円に対して、2億4,000万円で売却できれば結果大きな収益となります。物件の条件をシビアに考えてもその価格で売却できる見込みは十分あります。
新しく購入した物件はすべて守りに入らず、常にアクティブな姿勢で臨んでいます。時代を読みつつ不利な不動産を売って、融資の枠をつくり、次のチャンスに備えるのです。

※2)譲渡所得グループ内での損益の相殺(内部通算)が可能。

 

オーナーの勇気が次世代や国の未来をつくる

結果としてオーナーは高額の不動産収入を得つつ、2億円もの相続対策に成功しました。そして現在、一族の次世代の利益のために、更なる不動産経営を拡げています。多くの不動産を持ちながらも、手つかずの状態だった5年前には考えられない展開です。こんな大規模な不動産経営もきっかけとなった弊事務所との出会いは無料相談から。オーナーの知り合いの方がたまたま弊社代表を信頼していたから……という奇遇なご縁でした。
私はこれだけの成功を収めたのはオーナーの勇気ある決断にほかならないと思っています。オーナーは私たちを信用してくださり、こちらから提案させていただいた“できること”をすべて成し遂げていきました。その勇気と決断が今、ご自身に還ってきているのです。
次世代に“いいもの”を残し“いい先人”になるということは、もはや、一族、一家の利益のみならず、最終的には国の繁栄につながると私は考えています。明確な経営理念があり、使命をもって次世代のために取り組む地主こそ“いい地主”。そして、いい地主が今後の国を支えていくのだと思います。